龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「あたしがメグです。こちらが、ベスとエリィ」
侍女の制服である青いワンピースに白いエプロン、白い布で頭を覆った女の子に挨拶をされた。
栗色の髪の毛を三つ編みにして、青い瞳にそばかす。誰かに似てるなあ…と思ったら、メグさんは微笑んで教えてくれた。
「あたしの名字はカスタルディですわ、アリシア様」
「カスタルディ……あ!」
そうだ。昨日知り合った(?)ザラードの名前だ。
「もしかして、ザラードの…?」
「はい。弟から昨夜話を聴いて、お会いできるのを楽しみにしてました」
やっぱり…!ザラードのお姉さんがここにいたというだけで、なんだか心強い気がする。
「あのやる気がなかった弟が、“ぼく、頑張って竜騎士を目指すよ!”なんて言ったものですから、お父様も感激して涙ぐんでました。アリシア様のおかげです」
「いえ…ザラード自身が決めたこと。あたしはなんにもしてませんから」
あたしは否定したけど。ふるふる、とメグさんは頭を振ってあたしに頭を下げた。
「いいえ。弟はあなたの言葉に励まされたそうです。救われた……と。でなければ、弟とお父様は仲たがいしたままでした。本当に、ありがとうございます」
メグさんの話からすると、ザラードはおそらく竜騎士という道に対して父親となにかわだかまりがあったんだ。昨日も“父さんが断念した夢を託されちゃってさ…未だに決心しないまま来てるから”なんて言ってたし。不本意ながら学校に入って、渋々カリキュラムをこなしてる感じだったから。