私は魔王!

はじめまして。

重厚な扉を開くと、深紅の絨毯がフロアに広がっていた。
フロアの際奥に豪華な椅子があり、そこに人影があった。

「我が名は勇者ブレイブ・カストリー!非道な限りを尽くす魔王、お前を倒しに来た!」

見ると、なにやらキラキラと派手な外見の青年が、禍々しい大剣を掲げていた。
その青年を囲むように、数人の人族がそれぞれの獲物を掲げ、同じように私を睨み付ける。

「何を勝手な!土足で我が主の城を踏み荒し、謂われない理由で侵略するお前達の方が非道である!」
私の右隣で美形が吠える。
「人族は本当に傲慢で、強欲。醜いものであるな。」
私の左隣の美女が鼻で笑う。

「魔族が何を言うの!罪のない人達を残忍に殺して……。心がないからそんなことが出きるのよ!」
勇者の後ろに居た、見るからに貴族っぽい少女が叫ぶ。

さて、状況を整理してみよう。
ここは魔王城。
そこにいきなりなんの前触れもなく、人族数名が殺気駄々漏れで乗り込んできた。
先程言っていた「非道な」とか「罪のない人達を…」とか身に覚えがないし、初耳である。
というか、私はここ数年城の外に出ては居ない。つまりこの城に引き込もっていた。
それはもう、完璧に。
右隣側近のサイレスが知り合いのドラゴンを触らせてくれると言っても、左隣側近のディーダがカジュアルお見合いに連れていこうとしても、だ。
対人怖い!
完璧コミュ症!
私に話しかけないで!

と言うわけで、他人と関り合いになりたくないので、他人を害そうとも思わない。
ってか、できないし。
なんでこんないちゃもんつけられなきゃいけないんだ?
私は善良な引きこもりだ!
なんだか段々腹が立ってきた。

「…この威圧的な魔力。流石に魔王だな。」
キラキラ勇者が呟く。
「ブレイブ、援護します!」
ぱあぁぁぁぁっと勇者の体が光る。
あ、祝福かけたのね。貴族少女は司祭かな?
「相手に重力の魔法を掛けて、動きを封じ込みます!」
黒いローブを着たヒョロヒョロした男が叫ぶ。そちらはまんま魔導師ね。
でも、重力効かないよ?私。

「何か言ったらどうだ?魔王。」

禍々しい大剣を構えて、キラキラ勇者は凄む。
「……(怪我するまえに)帰れ」

ひょおぉぉぉぉっと冷気が沸き上がり、勇者ご一行を囲む。

爪先から徐々に凍っていく。
「くっ!卑怯だぞ魔王!!」
なんで?
頭の先までコチコチに凍らし、比翼タイプに人族国に送らせた。


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