私は魔王!

酒場にて

宰相の屋敷を後にした私達は、まだ人間国に居た。

「せっかく来たのだから、夕飯を食べていこう。俺のオススメの店が近くにある。」

おぉ!人間国の料理!食べてみたいっ!

「何言ってるんですか、終わったのならさっさと帰りますよ。あ、ブレイブ殿はここで解散。お疲れ様でした。」

「こっちだ。」

アランの言葉が終わらない内に、勇者がグイッと私の腕を引き寄せたせいで、よろけて勇者の胸にぶつかった。

ほぉ、なかなかの胸筋。流石に鍛えているか。

「なっ!何をされているんですかっ!!」

今度はアランに両肩を抱き抱えられ、ベリッと勇者の胸筋から剥がされた。

「ふむ。アランはもう少し鍛えた方がよいな。サイレスに訓練してもらうか?」

ペタペタとアランの胸も触る。

何故か顔を真っ赤にして悶えるアラン。

「はぅ!うぐっ!あああ」とか言ってるけど、どうした?

「……触るなら俺を触れ。」

とまたもや勇者の胸に抱えられる。

胸筋自慢か?

私達の後ろでギャーギャーわめくアランと共に、一件の店に着いた。

「はーい!いらっしゃーい!奥のテーブルにお願いしますー!」

なかなか賑わっていた。陽気に笑う声や、唄、注文する声が飛び交っている。

「苦手な食べ物はあるか?」

「いや、大抵食べられる。毒でもいけるぞ。」

「いや…毒はない。では適当に頼むぞ。」

「ちょっと、ブレイブじゃない!何してんのよ!」

体を覆う布の面積が少ない女性が勇者に話しかけてきた。

「も、もしやその女性は魔おぅ…むがっ!」

可愛らしい小柄な女性の口をがっしりとした体格の男が押さえた。

「…居たのか。今から食事を摂る。静かにしてくれ。」

「何がよ!なんでこの女と一緒に居るのよ!」

「そうです!なんでこんな女性と!!」

なんだか、ムッとする。私をこの女呼ばわりか?

「アビス様、魔力を押さえてください。」

おっと、いかんいかん。さすがアラン、冷静だな。

「アビス様を貶したこの下民を消してきますので、少々お待ちを。」

「「ひっ!」」

こらこら、アランの方が駄々漏れだぞ。

緊張感漂うこの空間に、いい匂いとともに焼きたての料理が運ばれてきた。

「すまない、ここでは押さえてくれ。まずは食事にしよう。ここのチーズ焼きは旨いぞ。ほら、熱いから気をつけて食べてみろ。あ、そんなにがっつくな。まだ沢山あるから。はははっ、チーズがついてるぞ。ほら。」

勇者は私の口の端についたチーズを取って、

「「「食べたーー!!」」」

アランも一緒になって叫ばなくてもいいじゃないか…

「いや、信じられんな。ブレイブが笑っているとは…」

「デン、悪いがこの二人を連れていってくれ。ゆっくり食事をしたい。この方と…」

深刻な表情の大柄の男性に引きずられながら、わめいていた女性二名は奥のテーブルに連れていかれた。

「もしや城に来た仲間か?」

「ああ、そうだ。ほら、また付いているぞ。これも旨いぞ。川魚をバターをまぶして揚げ焼きにしたものだ。小骨に気を付けろ。取るか?骨。」

むぅ、そこまで子供じゃないぞ。













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