私は魔王!

しがない第3皇子

「ねーねー、アビちゃん。街に行こーぜ。街に!ずっと部屋の中に居たんじゃ、カビが生えちまうぞ?」

私の目の前には、白銀色の尻尾が先程から忙しそうに右に左に揺れていた。
ワシャっ!と掴んでもふもふもふしたい衝動をぐっと我慢し、書類にペンを走らせる。

「アビちゃーーん?おーい、聞こえてる?」

謁見でいきなり喧嘩を吹っ掛けてきた獣人国のしがない第3者皇子は、帰国したと思ったら、次の日には城の庭にテントを張って、住み着いてしまった。

それから毎日のように私に絡んでくる。
あーやだやだやだやだやだやだ…

「……今日も来たのか、第3者皇子。そんなに暇なのか?」

こちらも当たり前のように、魔王の執務室に入ってくる人間国の勇者。

おかしくないか?色々と……

トントンとノックがして、アランが部屋に入ってきた。

「魔王様、西の結界に…ってまたあなた達!魔王様の邪魔をしてるんですかっ!!」

「よぉアラン。悪いんだが、今からアビちゃんと街に行って来るから、よろ~」

「何ふざけたことを!魔王様は執務中ですっ!大体、ムスタス皇子、一体いつ帰国されるのですか!さっさと自国に帰ってください!」

「あ、そうそうこれうちの国王からね。はい。」

真っ赤な封蠟の手紙をアランに手渡す。

「獣人国王からの?……はぁぁぁぁ!?なんですかこれはっ!!」

「俺がこの国に居る理由。じゃ、あとよろしく~」

急に腕を掴まれたと思ったら、小脇に抱えられ窓から外へ飛び出した。

どいつもこいつも窓からしか出入り出来んのか!












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