カマイユ~再会で彩る、初恋

後ろめたさで無意識に視線を逸らした、その時。
スッと立ち上がった佑人が、目の前に座り込んだ。

「俺、茜が好きだ。……十五年前からずっと」
「ッ?!!」
「二年前から海外勤務の打診を受けてて、ずっと先延ばしにして来た。茜と離れたくなくて」
「っっ……」
「俺と結婚して。……一緒について来て欲しい」
「………」

目の前に現れた宝石箱。
見たことも無いような大きいダイヤがついてる指輪が差し出された。

千奈が結婚することが決まっていて、この別荘に来るのも最後かもしれないから?
隆が千奈を諦めるのを間近で見届けるから?

今までずっと『好きだ』とも『付き合って』とも言われたことがないのに、いきなりプロポーズを受けた。

「……佑人」

絞り出すように紡ぎ出した声は、さざ波の音に掻き消されてしまいそうなほどか弱くて。
自分でもはっきり断らないと!と思っているのに、思うように声が出て来ない。

今声を発したら、佑人を悲しませるのが分かっているから。
ずっと彼の気持ちを見てみぬふりして来た罰かもしれない。

自業自得。
佑人を悲しませないで、先生との恋なんて成り立たない。

千奈のように前に進んで終わらせる恋もある。
隆のように打ち消して終わらせる恋もある。
佑人のようにぶち当たって覚悟した恋もあるんだ。

私の恋は……。

「ありがとうね、佑人。私のことを好きだと言ってくれて。優しい佑人が私も大好きだよ。……でも、それは恋じゃなくて、友情なの。ドキドキしてときめいて、ここを熱く焦がしてくれる人は佑人じゃない」

真っすぐ見つめて来る佑人に、印籠を突き付けた。

「そう言うと思った。……正直に言ってくれてありがとな。これで、心置きなく仕事に専念できる」

頬に伝う涙を佑人は優しく拭ってくれた。

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