再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

苦い思い出ーside.優太ー

この日、莉乃が帰宅したのは21時を回った頃だった。

「友人と会う」と、出かけた莉乃だったが、なんとなく嫌な予感がしていた。
その予感というのは、なぜか的中する。



「ごめんなさい……」


莉乃が帰宅してからすぐ「話すことがある」と、言われた。

寝室ですでに眠ってしまった蒼斗くんを見てから、ソファーに腰かけた莉乃。
すぐ横に腰かけると、莉乃は今までに見たことのないような固い表情を浮かべていた。

多分、俺にとってはよくない話の内容なんだろう。
だからこそ言い出しにくいのだろう。

「莉乃、どうした?」と促すと、莉乃はゆっくりと口を開いた。


「あの……実は私、忘れらない人がいて……」

「うん」

「その人も、私のことがまだ好きで……」


そこまで聞いて、誰のことを言っているのかすぐにわかった。

おそらく、蒼斗くんの本当の父親だろう。
父親がどんな人なのか聞いてはいないが、まだ莉乃のことを好きでいたということだ。


「蒼斗くんのお父さん?」

「えっ、どうして……」


戸惑った様子の莉乃だったけれど、俺の予想は的中したようだ。

きっといつかこうなるのではないかと、それすらも予想していた俺だったけれど、まさかそこまで的中するなんて。
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