再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
そして、私が充実していると思えるもう一つの理由。それはーー。


「莉乃」

「蒼汰さ……あ、蒼汰先生。午前の診療お疲れ様でした」


愛する蒼汰さんが、近くにいてくれること。

まだ、看護師さんや荒木さんには私たちの関係は伝えていない。
というのも、変に気を遣われても困るから。

私の苗字が変わってから、正式にみんなに報告しようかと2人で決めたのだ。


「あら、蒼汰先生。西野さんのこと下の名前で呼ぶなんて。もう仲良しなの?」

「えっ、あ……それは」


蒼汰さんが私のことを下の名前で呼んでいたことを指摘され、目が泳ぐ。
しまった。呼び方のことは、まだ話し合ってなかった。

ベストな言い訳も思い浮かばず、慌てている私に助け船を出したのは、もちろん蒼汰さんだ。


「いえ。彼女、高校の時のバスケ部の後輩なんですよ。そのときの名残と言うか」

「あらそうなの! すごい偶然ね」


「そういうの素敵でいいわね」と納得した様子の荒木さんは、バッグを持ってお昼休みに入ろうとしている。

そうか……。その手があった。
私たちが先輩と後輩の関係だということに嘘はない。

でも、入籍して苗字が変わったら……飛び上がるくらい驚くだろうな。
スピード結婚だと思われなければいいけど。
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