再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

「……俺は、ただ少し現実逃避をしたかっただけだ」

「現実逃避？」

「あぁ。毎日毎日、父が『結婚はまだなのか？』『お前はこの医院の後継ぎなんだぞ』ってうるさいから」

「医院の、後継ぎ……ってことは」


……まさか。あの有名な『高森皮膚科クリニック』って、もしかして高森先輩のお父様の病院？

だとしたら、彼は御曹司。
皮膚科医でとても有名で、医療系の雑誌にもよく高森皮膚科クリニックが取り上げられていることがある。

皮膚科を受診するなんてことはあまりないけれど、高森皮膚科は私たちの住む街でとても有名な皮膚科だ。
それだったら、お父様が彼に対して言っていることに納得がいく。


「大変……なんですね」

「あぁ。俺は今は近くの大学病院で勤務医としているけれど、いずれは父の後を継がないといけなくて」


そうだったのか。それで、息子である高森先輩に結婚を強要しているんだ。
毎日それを言われていたら、確かに現実逃避もしたくなる。

思っている以上に、高森先輩はストレスを抱えているのかもれないな……。


「あ……また、お店来ます？」

「西野が話相手になってくれるなら」

「も、もちろんです！　むしろ、私以外の誰がお相手になれるんですか？」


「あはは、そうだな」と、弱々しく笑った高森先輩。

この日をきっかけに、私と高森先輩の交流がスタートしたーー。