再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

新しい生活と、彼の気配

あの日から2年ーー。
季節はあの頃と同じ、冬。

この頃になると思い出してしまう、蒼汰さんとの結婚生活。

たった数ヶ月だった結婚生活だったけれど、私にとっては儚い思い出。
忘れたくても忘れられない、彼の気配。



「ママ、さむいよ」


玄関先で両手を広げ〝抱っこして〟のポーズをしているのは、もうすぐ2歳になる息子、蒼斗(あおと)だ。
小さなキッズサイズのマフラーを蒼斗の首に巻くと、そのまま抱き上げる。

蒼汰さんのマンションを出てすぐ。
私のお腹に新しい命が宿っていることがわかった。

蒼汰さんに伝えておくべきなのか迷ったけれど、置手紙と離婚届を突き出してきた身だ。
そのままだまって産むことを決めた。

代理人に書かせたという離婚届。
置手紙にはお母様のことは一切触れず『やっぱり、結婚は向いていなかったようです。ごめんなさい』とだけ記載して、ルームカードキーと共にテーブルに置いて出た。

結局もといたアパートに再び入居し、一緒に持って出て来た医療事務の参考書で資格取得に向けて勉強をしていた矢先、妊娠が発覚。

産まないという選択肢はなく、大きなお腹を抱えての試験に挑み、無事医療事務の資格取得を果たした。
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