ねぇ、悪いことしよ?

実行委員

「来月何があるか知ってるかぁ?」
「体育祭でしょー?」

 そしてワイワイ行事大好き陽キャ軍団が騒ぎ出す。

 高校最後の体育祭まであと一か月を切るか切らないかのころ、3年間同じの担任がHRで話題を振る。
 この展開ももう慣れた。 
 その質問に元気いっぱいに返事をする陽キャ軍団。楽しそうで何より。だが、こういう人たちは実行委員などやりたがらない。その結果、大体くじ引きで決まる。その時間が、私には憂鬱だ。

「その通り。ということで、各クラスから1人、実行委員を出さなきゃならない。だれかやってくれる人いないかー?」

 シーン。

 ほら、驚くほどにこの擬態語が似合う空間が出来上がった。さっきまでのうるs、、、にぎやかさはどこに行ったのか。誰もが他人に擦り付けようときょろきょろしている。
 そして多分、この後に来る流れは、、、

「なんだ、いないのか。じゃあ先生お手製のくじで選出しよう」

 やっぱり。私は周りの人にばれないよう小さく息をつく。
 高校に入ってから友達が誰もいない私が仮になったのなら、困るのは先生やクラスメイトたちだ。なのになぜ、こういうときに限り、公平さのためにくじをするのだろうか。
 
(あーー、やだな。絶対なりたくない。今までならないですんだ代償が来ませんように)

 そうやって必死に祈りながら順番を待つ。
 毎年そうだが、割り箸をクラスの人数分用意し、その中1本に赤のサインペンで印をつける。とても資源が無駄な方法だと思う。

 そしてやってきた私の順番。結果は――

「おめでとう!葛西が実行委員だ!よろしく頼むよ」
「葛西さんよろしくぅ~、だれか知らんけど」
「葛西さんって誰?」
「おまっ、やばいだろw」

 もはや公認のボッチ。悲しいとか寂しいとかいう感情はいつかの私が捨てた。
 仕方ない。任されたからには最低限はするか、、、、。

「よろしくお願いします」

 そういって無事ではないが無事に実行委員が決まる。

「じゃあ葛西は、放課後生徒会会議室にいってくれ。よろしく頼む」
「はい」

 嫌味の一つも込めて『仰せのままに』ぐらい言ってやりたかったが、さすがにやめておいた。
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