(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
提案は思い付きで


「ほら、しっかり歩け。俺を襲撃してきた勢いはどうした?」
「……そんなものは、どこかへ消え去りました」

 強引に連れてこられた場所は、神楽(かぐら)グループのビルの最上階だった。一般人が入れないようなしっかりとしたセキュリティ、それを解除して彼はどんどん奥へと進んでいく。
 【社長室】と書かれた部屋の隣、彼はそこのドアを開けると私に中に入るように言った。

「あの、私はどうしてここに連れてこられたんでしょうか」
「さっきまでと別人のようだな。そんなにショックだったか? あんな男に裏切られたことが」

 ハッキリとそう言われて、傷口を抉られてるような気分になる。神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)にとっては()()()()かもしれないが、私にとって守里(もりさと) (ながれ)は結婚を考えるほど好きだった男性なわけで。
 ショックを受けるなという方が無理があるのではないかと思う。それなのに……

「そんなしょぼくれたような顔ばかりするな、この部屋まで辛気臭くなる」
「だったら連れて来なければ良かったじゃないですか、自分が引っ張って来ておいて私に文句言わないで」

 落ち込んでることに変わりはないが、こうも言いたい放題言われていてムカつかないわけがない。泣きっ面に蜂の状態なのに、そんな私の傷口に塩を塗りたくるような神楽 朝陽の言動にも腹が立ってくる。
 それなのに徐々に言い返すようになってきた私を見て、彼はなぜか楽しそうに笑い始めた。
 

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