白い嘘と黒い真実

第8話.突然の告白


「ええ!?ストーカー!?」

出勤して早々、更衣室で一緒になった紗耶に昨日の出来事をいの一番に話したら、予想以上の声量で驚かれてしまい、私は慌てて彼女の口元に手をあてる。

「声が大きいよ。昨日は澤村さんのお陰で何事もなかったから良かったけど、今日もどうなるか……」

とりあえず、今朝あの男の姿はなかったので、もしかしたら澤村さんの存在によって諦めてくれたのかもしれない。

でも、その確証はないし、そもそも好意によるものなのか、はたまた何か別の目的で後を付けられているのかも分からないので、ずっと緊張状態が続く状況に嫌気がさしてくる。

事が起こる前まではそんな不安なく過ごしていたのに、見ず知らずの男の身勝手な行動により、一瞬にして自分の平和を奪われてしまったようで、悔しさと腹立たしさまで湧き起こってきた。

「それなら落ち着くまで一緒に帰ろう。一人は危険だと思うし」

「でも、それじゃあ紗耶も巻き込まれるかもしれないから、止めた方がいいよ」

気持ちはとても有難いけど、もしかしたら無差別かもしれないし、紗耶は美人だからターゲットを変更されてしまう可能性だってある。
なので、万が一また男に付けられた場合は、最悪タクシーで帰るという、かなり痛い出費ではあるけど、背に腹は変えられないので、苦渋の決断をすることにした。

「それにしても、全く面識ない人にいきなりストーカーされるなんて、マジで怖過ぎだよ。真子やっぱりお祓いした方がいいんじゃない?ここ最近不運続きじゃん」

確かに。元々運は良い方ではないけど、不倫の件から始まり、結婚詐欺被害、彼氏の逮捕、強盗現場の遭遇、それにストーカーまで。

これ程の出来事を経験するなんて、世の中探してもきっと私ぐらいしか居ないかもしれない。
もしかしたら、紗耶の言う通り、本当に何か憑いているかもしれないので、真面目にお祓いは考えた方がいいかも……。

そんな事をぼんやりと考えながら、私は澤村さんの合鍵がちゃんと入っているかどうか確かめる為、カバンの中をもう一度開く。

この鍵を見ていると恐怖心から解放されるので、出来ることならずっと持ち続けていたい。

けど、そういうわけにもいかず、私は鍵があることを確認すると、カバンをロッカーにしまい、紗耶と一緒にデスクへと向かった。
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