白い嘘と黒い真実

第13話.絶望の淵に




「……はい、今の所心拍数は正常ですので」


「……では……とります」


「……分かりました。……戻ったらご連絡します」





遠くの方で声が聞こえる。

なんだろう、凄く事務的な会話。

もしかして、閻魔様が私の魂の処遇を決めてるとか?


多分悪いことはしていないから、きっと天国に行けると思うけど……。



「椎名さん、大丈夫ですか!?」


頭の中がぼんやりとする中、自分でも何を考えているのかよく分からないまま虚な状態でいると、突然耳元で女性の声がはっきりと聞こえ、そこで意識が覚醒した私は、目を思いっきり見開いた。

「ああ、意識が戻って良かったです。話を聞きたいところですが、今すぐは難しそうですね」

「こちらで検査して大丈夫な状態になったら追って連絡しますので」

真っ先に視界に映ったのは、上から私を除いてくる看護師らしき女性と、向かいに立っている見知らぬスーツを来た中年男性。

そして、ここが何処なのかも分からず、まだ思考回路が上手く働いていない間に何やら二人は会話を進めていき、その後中年男性は部屋を出てしまった。

……ここは、病院?
もしかして、私助かったの?

見覚えのない真っ白な天井。
仄かに香ってくる薬品の匂い。
一定の音を奏でるバイタルセンサ。
そして、左腕に繋がっている点滴。

視覚、聴覚、嗅覚を研ぎ澄まして察知した自分の置かれている環境。

こうしてしっかりと心臓が動いていて、息をしているということは、おそらくあの後私は無事に救出されたのだろう。

崖から二度も落ちて、二度も助かるなんて運が良いのか悪いのか。

とりあえず、あれが私の最期じゃなくて良かったと。

もっと思う事は色々あるのだろうけど、真っ先に感じるのは自分の命がまだ繋がれたことへの安心感だった。

まずは試しに少しだけ体を動かしてみると、右足首に激痛が走り、思わず顔を顰めてしまう。

「ああ、右足は折れてるからあまり動かしちゃダメですよ。それ以外は打ち身と捻挫で、骨には異常はないから安心してください。落ちた場所がちょうど木々の生えた所だったし、高さもそこまでではなかったので、命に別条がなくて本当に良かったですね」

すると、看護師から即座に制止が入ると同時に、教えてくれた私の転落状況。
それは、幼い頃と同じで、今回も草木に守られた私は無事助かったということ。

ただ、何の因果か。当時と同じ部位を骨折した状況に心境は複雑だ。

けど、こうして再び命は救われたので、今度から植物は心から大事にしていこうと痛感しながら、一先ず私は状況を整理しようと体を少しだけ起き上がらせ
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