白い嘘と黒い真実

第14話.黒い真実

あれから数日が経過。

骨折生活にも徐々に慣れ始めていく中、気付けば一週間の休暇もあっという間に過ぎ去ってしまった。

澤村さんとも、あの日以降彼の仕事が忙しくなってしまった為一度も会うことが出来ず、仕方がないとは思いつつも寂しさが募る。

けど、ここは気持ちを切り替えねばと。私は更衣室で制服に着替えた後小さく深呼吸をしてから気合を入れて、久しぶりの職場へと顔を出した。

それから、先ずは復帰の挨拶とお詫びを兼ねて、自分の席に着く前に上司や同僚の方々の元へと向かい深々と頭を下げに回る。

その間、皆真っ先に私の容態を気遣ってくれたので、改めて人の温かみを身に沁みて感じながら、一段落したところでようやく自分の席に腰を下ろした。

そこで、ふと隣に目を向ければ、毎度誰よりも早くキーボードを打つ音が聞こえてくる紗耶のデスクは今日も空席で、やはり予感的中となってしまった状況に私は小さく肩を落とす。

「黒川さん大丈夫かしら。先週は家の都合だったけど、今度は本人の体調不良で暫くお休みだって。彼女がこんなに休んだことは今までなかったからちょっと心配よね」

すると、私の様子に気付いた向かいの席の主任さんも、同じように深刻な表情をしながら紗耶のデスクに目を向ける。

「……そうですね。何もなければいいんですけど……」

あまり多くを語れないので、会話を掘り下げることは出来ないけど、兎に角それに尽きると。
私は心からそう願いながら、密かに溜息を漏らした。


今朝は出勤してから紗耶の現状を確認するため真っ先に高坂部長の元を訪れたけど、どうやら今は遠方出張の為数日帰って来ないのだとか。

人伝で彼の連絡先を聞くのも良かったけど、その行動の理由がまだ上手くまとまらない以上下手に動くことは出来ず、結局彼女の行方は不明のまま。


これなら、いっそのこと紗耶の家に直接行ってみた方が早いかもしれない。

その考えは前々からあったけど、なかなか勇気が持てず今に至る。

けど、ここまで来たら現時点ではそれしかもう方法はない気がして。

これまで、紗耶のことについて色々悩み続けていたけど、やはりここは澤村さんの言う通り、親友だろうと犯した罪はしっかりと償ってもらおうと。

そう気持ちが固まりつつあるので、もし会えればきちんと話をしたい。

そう思うと居てもたっても居られなくなり、早速今日仕事が終わったら彼女の家に行こうと心に決めた。
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