Labyrinth~愛に迷う~
 折よく正美の下の子が

「ママ、見て、ママ。」

 と言い出して話はそれで終わった。

 私達は仕事の話やら職場の人間関係の話やら、血液型から相性などとりとめない話をしながら飲んでいた。

 しばらくして

「今何時だろ?」

 正美が時計を見ながら言った。

「そろそろ22時か。帰ろ。シン、アヤ、帰るよ。上着着て。」

「私も帰ろうかな。」

 立ち上がろうとした私の袖を鈴木さんが引っ張った。

「まだいいじゃん。」

 鈴木さんが引き止めた。

「どうせ帰ったって誰もいないんだろ?」

 その通りだった。この時間に悟が帰宅しているなんてことはまずない。その言葉で帰る気が失せた。私はすとんともう一度座った。
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