Labyrinth~愛に迷う~
ベッドに入っても全然眠れなかった。いつ頃からこんな風になってしまったんだろう、私達。

そんなことを考えているとどんどん切なくなって涙がこぼれた。

この部屋で暮らし始めた頃はマンネリなりにまだ温かい空気はあった。いつ頃からこんな風に冷え切ってしまったんだろう。

ずっと昔、悟が私に夢中だった頃を思うと涙が次から次へと溢れてきた。

悟は爽やかでかっこよくて私も悟に夢中だった。一緒にいる時、周りにいる見知らぬ他人に心の中で叫んでいた。

(見て見て!彼すごくイケメンでしょ?彼、私に夢中なの。いいでしょう!)

そろそろ30歳になろうとしている今も悟は十分かっこいい。会社でも悟のことをいいと思っている女の子はたくさんいると思う。

容易に想像出来た。初対面やよく知らない人に対して悟はすごく人当たりが良く優しいのだ。

今の私に対する態度とは別人のはず。その完璧な笑顔に魅了されない女性はいないとまで思えるほど。

(やっぱりほかに誰かいるのかな・・・やっぱり誰かに悟を取られるのは嫌。)

涙がどうしても止まらなかった。
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