Labyrinth~愛に迷う~

急な誘い

家に着いて買ってきた食材をしまいながら入浴の準備をしていると携帯に正美から着信があった。出る前に切れてしまったのでかけ直した。

「ごめんね。出るの間に合わなくて。」

周りの音がうるさい。外にいるんだろう。

「いいよ。急だけど今から出てこれない?無理?」

正美は飲んでいるような感じだった。私はちょっと迷った。昨日も飲んだしもう家に着いてしまって出ていくのも億劫だった。

「うーん。昨日の今日だしね。今日はやめとこうかな。」

「だよね、ほらね。」

正美は一緒にいる誰かと話している様子だった。

「もしもし?」

私は正美に声をかけた。

「もしもし、武田です。」

いきなり男性の低い声に変わったのでびっくりした。状況が飲み込めず反応できなかった。

「え?ああ。武田くん?何?武田くんも一緒なの?」

咄嗟の事で事務的な言い方になってしまったのかも知れない。

「冷たいなぁ。俺が一緒じゃいけないの?俺、川島さんに嫌われてる?」

いつもの武田くんからは想像もつかない、ふざけたような甘えたような言い方にまた驚いた。誰かと間違えているのか?
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