溺愛社長とお菓子のような甘い恋を

そのまま海斗さんの家に泊まって、休みの日は久しぶりにデートをした。

「海斗さん、見て!」

私はイルカショーを指さす。
海の近くの水族館まで海斗さんの車で来た。
中に入ると、大音量の音楽に乗ってイルカが軽快にジャンプしている。

「凄い! あんな高いところまでジャンプしていますよ」
「揃っていて綺麗だな」

海斗さんも楽しそうに目を細める。
水族館なんてベタかなと思ったけど、楽しそうでよかった。
イルカを見終わると館内も回る。

「マグロだ、太っていて旨そうだな」
「こっちはカニもいますよ」
「カニもいいな。冬だしカニ鍋が食いたくなる」
「……海斗さん、味の感想しか出てないですよ」
「大人になるとついな……」

そう言いあってフフフと笑う。

「海鮮物食べて帰ろうか」
「はい」

差し出された手を握り返す。
帰りの車の中で、海斗さんに「はい」と袋を手渡された。

「何ですか? あ、イルカ」
「さっき土産物屋で買おうか悩んでいただろう」

袋からは少し大きめのイルカのぬいぐるみが出てきた。
記念に欲しかったが、そこそこ値段がするので買うのを諦めたのだ。

「ありがとうございます。あれ? まだ何か入っている……」

袋の底に、小さな箱があった。
取り出して、中を開けると……。

「これ……」
「つけてもらえると嬉しい」

海斗さんは前を見て運転しながら、どこか照れくさそうに呟いた。
箱の中から、綺麗な指輪が出てきたのだ。
シンプルだけど、宝石が散りばめられていてとても綺麗だ。
もちろん、水族館などで売っているようなものではなくちゃんとしたブランドの指輪だ。

「花澄は俺の彼女だって示したいんだ」
「彼女……」

改めて海斗さんの口から言われると何ともくすぐったい。

「いつか正式な物を渡すまでは、それ着けていて」

正式な物……。
パッと海斗さんを見ると、照れくさそうにしている。

「ちゃんと先まで考えているから」

将来まで考えてくれている……。嬉しい。嬉しくて泣きそうになってくる。

「花澄?」
「楽しみに待っていますね」

にじんだ涙をぬぐって、微笑むと海斗さんはホッとしたように笑顔を見せた。


< 25 / 35 >

この作品をシェア

pagetop