シュガートリック




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今日の朝はすごく天気がいい。
でもそんな雲ひとつない晴天の下で……私は顔をあげることができずにいる。

学校の門をくぐり、玄関に向かうまでの間。
前を見ることができず、人と目を合わせないよう目線だけを下にして歩いている。


私に集まる視線と私に関するヒソヒソ話。
毎日のように繰り返されるこの日常が、私にとっては息苦しくて。


「花染(はなぞめ)さんだ……」

「めっちゃキレー……朝から色気やば……」

「あんな美人じゃ、そりゃ男に困ることないよね……」


周りの視線、周りの声が、気になっていないように振舞って玄関で靴を履き替える。
ふぅ、と誰にもわからないようにため息をついて二年の教室に向かい、その間も人と目を合わせないように一点だけを見つめて。

……無事に……無事に、教室までつきますように……。
少し早歩きになりながらも、二年一組と書かれたドアを開けると。



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