Good day ! 3
「藤崎さーん!聞いて、またまた完売よ。お子様のフライトデビュー」
「え、本当ですか?」

2週間後、川原がオフィスで恵真を手招きした。

「そうなの。それで、見て!SNSのコメント。あなた達パイロット夫婦を、皆様覚えていてくださったようよ」

川原のパソコンを覗き込むと、
『わー、お二人にお子さんが産まれていたとは。おめでとうございます』
『しばらく話題に上がらないなと思っていたら、奥様おめでただったのね!』
『フライトデビュー、素敵な企画ですね!』
『うちの子もそろそろって思ってたから、思い切って乗りたいと思います!』

数々の嬉しいコメントの中、あるコメントが目についた。

『私達、お二人のハネムーンフライトに乗りました!そして今、2歳半の子どもがいます。まだ飛行機に乗ったことないです。これはもう運命的!子どもと一緒にまたお二人の便に乗ります!』

えー、凄い!嬉しい!と、恵真も笑顔になる。

『なんならフルムーンフライトも乗りたい!3つ搭乗証明書集めたらコンプリート?』

すると、いいね!と他の人もたくさんのコメントで盛り上がっている。

『コンプリートしたら、写真載せてください!』
『フルムーンフライト…って、何歳?』
『あはは!確かに』
『JWAさーん、いつですかー?』

恵真は驚いて川原を見る。

「わっ、聞かれてますよ?川原さん」
「そうなのよー。でもね、実は上層部の人達は既にやることを視野に入れてるみたい」
「そうなんですか?」
「そう。具体的に何歳の方を対象にするかは、まだ決まってないけどね」

すると話が聞こえたのか、部長が近づいて来た。

「藤崎くん、君達のお子さんが20歳になった時に、また夫婦で飛んでくれないか?フルムーンフライトとして」
「ええー?!」

恵真は仰け反って驚く。

「部長、一体いつのお話を?」
「えーっと、今から17年後か。あはは!わしはもう定年でいないな。でも、君達の勇姿を見届けに来るよ」
「いえ、あの、そんな先のお話、今はまだ…」
「そうだな。まずは来月の、お子様のフライトデビュー、しっかり頼むよ」
「は、はい」

部長は満足そうに頷いて、離れていった。
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