A Maze of Love 〜縺れた愛〜

***

 刃物を手にしたまま、車に乗り込んだ。
 
 警察に自首するつもりだった。
 凪咲が罪に問われないように。

 でも、凪咲が追ってきた。
 窓を叩きつづける彼女に負けて、大翔はドアを開けた。

「置いていかないで。ひとりでなんか、行かせない」
「やっと一緒になれたんだから」
「わかったよ」

 やっぱり、置いていくわけにはいかないか。

 大翔はリュックからペットボトルを取り出した。
 せめて、凪咲が苦しまないように、常に持ち歩いていた睡眠薬の粉薬をありったけ、その水に溶かした。

 口に含み、助手席に座る凪咲の顎を掬いあげ、口移しに数回、飲ませた。

 そのまま、長いキスを交わした。
 絡めあっていた彼女の舌から力が抜けてゆく。

 眠りに落ちた彼女に、もう一度だけ口づけしてから、大翔は埠頭を目指して車を走らせた。


 そして、立ち入り禁止の柵を強引に突破し、海めがけて、アクセルを限界まで踏み込んだ。
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