A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 ふと渚の脳裏に、大翔のスマホの待ち受けがよみがえった。

 無邪気に戯れる少年と少女の写真が。
 あんな小さなころから、ふたりは一緒だったんだ。

 そして、はっきりわかった。
 大翔は渚を通して、この人を見ていたんだ。
 この人を感じ、この人を抱いていたんだ、と。
 
 大翔が時折見せた、悲しげな眼差しを思い出した。

 彼は渚を憐れんでいたのだろうか。
 それとも、想い人が決して手に入らないことの絶望をいつも感じていたのだろうか。

 問いただしたくても、大翔はもういない。

 渚はしばらく何も手につかなかった。
 悲しいのに、涙も出ない。

 試験期間だったけれど、大学には行けず、当然、仕事にも行けなかった。

 大翔のそばに行きたい。
 何度もそう考えた。
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