海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します
クリオネという生物を知っているだろうか?
クリオネは節足動物門腹足綱裸殻翼足類、ハダカカメガイ科、ハダカカメガイ属に属する貝の総称で、日本ではハダカカメガイとも言われている。
見た目が小さく可愛らしく、体は透明な部分が多く、体の前半に局2ある。
胴体の前部に透明な1対2枚の翼足 があり、翼足を動かして海中遊泳する。
この姿を見た者はクリオネを「流氷の天使」あるいは冷たい海に生息することから「氷の妖精」と呼び、また英語では sea angel とも呼ぶようになった。
そんな可愛らしいクリオネには、学者以外の者は知らない姿があったのだった。

「今日はクレイオーが闘う日かぁ」
「心配か?」
「セラは心配じゃないの?ほら、クレイオーは他の戦士よりも小さく可愛らしいから…」
「フッ、クレイオーが小さく可愛らしいか…。てっきりお前なら分かってたと思ってたがな」
「分かっていたって……まさか…」

アオは海洋生物学者で、人より数百倍海洋生物の知識は頭にあり、俺が言った言葉にアオは全て察した。

「まさか…あの姿で」
「そうだ」
「結構グロくない?大丈夫なの?」
「大丈夫もなにも普通なことだ、幾ら姿が人間に近くなっても捕食する時は、元の姿と変わらない捕食の仕方で捕食をする」
「まぁ、そうだけど…でもちょっと見てみたい」
「闘い見に行くか?今ならまだ始まる前で間に合う」
「見に行く!見てみたい」

アオと2人で、クリオネの闘いを見る為に会場に向かった。
会場はやはり、今日の闘いを見るべく人で溢れかえっていた。
それもそうだ、なんせ今日の闘いは滅多には見れないような闘いになるのだから。

 俺とアオは会場に着き、見やすい方の席に座り始まるのを待った。

「誰もが近寄ることすらしない海!アークティック。この海は肉体をも凍らせ、住人は数知れず、厳しい環境から血なまぐさい争いが繰り返されていた!この乱をとめるべく、いくもの男達が人々に訴えてきた!しかし、猛者達でさえ乱を止めることは出来なかった!乱を止めアークティックに平和をもたらしたのは1人のメスだった!!その姿を見た者達は、皆美しい海の天使といい武器を捨てにひれ伏した!そして、この闘いにも平和をもたらす為に、今!!この地に現れる!!そいつの名はクレイオー!!」

トリトーンの合図と共に、クレイオーは会場に現れた。
アトランティスの民誰もが、奴の姿を見て、天使のように美しいと泣き始める。

「あらあら、そんなに泣かなくてもよろしくてよ?」

「さぁ、平和をもたらす天使に対し、相手となる奴は!陸の伝承にもあり、海には目に見えない怪物がいるといわれてきた。しかし、その怪物は取るに足らないちっぽけな存在でありながら、猛毒で人々を苦しめ、時には死に至らしめるともいわれ、人々も神からも危険視された最恐最毒な戦士!ルキア!!」

そして、クレイオーとは反対側から現れたのは、イルカンジ族のルキア。

「うるさい…」
 
イルカンジ族はクラゲ族の中で、1、2位を争うくらいな猛毒を持つ最恐最毒戦士一族。
奴の毒を食らったらイルカンジ症候群になり、重度の頭痛、腰痛、筋肉痛、胸部、腹痛、吐き気と嘔吐、発汗、不安、高血圧、頻脈、肺水腫など弱い人間ならば1時間以内には死ぬと言われている。

「まさか、イルカンジと戦うなんて…クレイオー大丈夫?」
「大丈夫だ、あいつは…俺達7天の中で唯一不老不死とも言われてる。そう簡単には死なんよ」
「不老不死…?」

アオはクレイオーの闘いを少しだけ、不安を抱えながらも見るようにした。

「まさか、最恐最毒と呼ばれる貴方と闘うなんて…光栄だわ」
「ウチはアンタとは闘いたくはなかったよ、アンタの噂はここまできてるからね、クソサイコパス」
「あらあら、女の子がそんなはしたない言葉使ってはいけませんわ?」
「うるさい!その、うるさい口、人間もろとも塞いでやる!」
「あらあら、せっかちね。せっかちは嫌われるわよ?」
「モスト!!」

ルキアの毒の触手がクレイオーに勢いよく巻きついた。

「あらあら」
「このまま、お前を毒で殺してや…」
「ブイヨセフェラ」
「!?」

黒の球体が、クレイオーとルキアを一呑みで呑み込んだ。
  
「始まったな…」
「え!?なんか、黒の球体が2人を呑み込んだけど、これって」
「クレイオーは絶対に相手と戦う姿は、とどめを刺す手前までは見せない」
「なんで?」
「……まぁ、アイツの趣味だ」

黒の球体に呑み込まれた2人、外からはその様子を見ることは愚か、内側からの声や音すらも聞こえない。

「お前!」
「そんな怖い顔しなくてよ?ただ、戦争みたいな状態では使えない技を、久しぶりに使えたのだからもっと楽しまなくてはいけませんわ?」
「ゲス野郎…お前を倒せば、これも解除されるのだろう?」
「倒す??それは無理ですわ」
「!?」

ルキアの足を黒い触手が絡み掴んだ。

「くっ、動け…」
「無理ですわ、この空間は私の意志そのもの。私が貴方を解放したいと思わない限り、解放はされない」
「っ……」

クレイオーはルキアの両腕も拘束し、ゆっくりと優しくルキアの頬に触れ、優しく微笑みながら、ゆっくりと手をルキアの胸の方に下ろす。
 
「そんなに、怯えないで?安心して?私は貴方には血を流させたりはせずに、この闘いを終わらせるわ」
「よせ、やめろ!」
「私と一緒に快楽に落ちましょ?」
「い、いやぁぁぁぁぁ!」

2人が球体の中で色々してるなか、会場にはその様子は全く分からず、ただ静けさだけが広がっていた。

「番組は動かないし、球体の中で何かしてるのも分からない…」
「まぁ、分からない方がいい」
「へ?」
「前も言ったが、クレイオーはかなりの性欲の持ち主だ。クリオネ族は今が繁殖期。だからといって、誰もかまわず交尾はしない。しないようにする為にあいつは、あの技を開発したんだ」
「じゃ、あの球体の中で行われているのは」
「クレイオーの性欲発散」
「oh……」

アオは全て察しながらも、クレイオーの性欲の恐ろしさに若干引いてしまった。
無理もない、陸の人間じゃクレイオーみたいな無理やりやる奴は、大体は捕まるからな。
それにだ、クレイオーの番を見たらよくわかる。
疲れて顔がやつれており、誰もが心配するような状態だ。
クレイオーも馬鹿じゃないから、多分今回の闘いで思う存分欲を満たし、暫くは交尾をしないようにする。
じゃないと、番がヤリ過ぎ死にかねないからな。

「あ、セラ!球体が!」
「終わったみたいだな…」

球体が消え、呑み込まれた2人が現れた。
クレイオーは満足した表情はするものの、ルキアに関しては、言うまでもなく昇天している。

「やはり、たまには欲を満たすのはいいことね!さぁ、仕上げにいきましょうか」

クレイオーをゆっくりと、自身の頭を開き始めた。

「ふふ、可愛いかったわ…クラゲ族でも珍しい両性持ちだったから、ついつい遊びすぎた。それにお腹も空いたから…」

ゆっくりと開いた頭からは、触手が現れルキアを一気に丸呑みし、ゆっくりと味わうようにし、最後はルキアの跡形もなくなっていた。

「ごちそうさま」

「な、なんと!クレイオーまさかの、会場には血一滴すら落とさず闘いを終わらせてしまった!」

クレイオーは満足顔し、周りの観客達はクレイオーの恐ろしい一面を見たからか、怖さのあまりに会場は静まり返っていた。
 
「やはり、見た目の可愛いさからアレがでるからな…天使か悪魔か分からない」
「まぁ、この世界は弱肉強食。喰われる者も現れる。今回は、クレイオーが喰い勝った」
「まぁ、確かにそうだけど」

そう、クレイオーは見た目が美しく海の天使と言われ、乱を止めたのではなく、クレイオーの恐ろしい姿をみた強者達が、あまりにも恐ろしいと恐怖し膝まづいて、乱が止まったのだった。
その日、会場に居た観客達はクレイオーは天使ではなく悪魔として語り継ぐのであろう。

 そして、クレイオーは恐怖を残し、クレイオーとの闘いは無事に幕が降り、終わった。
 
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