海底に沈む世界を救う為に異種間恋愛します

強き戦士2人の幼く懐かしい思い出。
この思い出は、2人しか知らず誰も知らない思い出。
この思い出があるからこそ、1人の男は強き戦士になり名をオーシャンじゅうに広めさせたのであった。

そして、時は戻りアトランティス。 
あの後から夜になり、オルカと約束した場所に、俺とアオは向かった。
夜のアトランティスは、発光石が綺麗に光っており、夜のアトランティスを明るく照らしていた。
アオは夜のアトランティスを歩くのは初めてで、昼のアトランティスの雰囲気が、夜では少しだけ大人の雰囲気があり、アオは雰囲気だけでも楽しんでいた。

「夜のアトランティスってなんかいいね!なんか、横浜みたい」
「そうか?」
「そもそも、夜のアトランティスを歩くのは初めてだなって」
「確かにそうだな、夜のアトランティスは確かに綺麗だが、人間のお前からしたら危険な場所だ」
「セラは心配し過ぎだって!」

オルカに教えられたとおり、道を順番よく歩く。
さっきまで通ってきた商店街とは、雰囲気がガラリと変わり静かな雰囲気なレストラン街に着いた。
 
「やっと来たか!」
「……」
「ごめん、遅れた!」
「アオ」
「マツリ~!あ、めちゃくちゃ可愛い服着てるじゃん」
「アオも綺麗な服だよ!」
「へへ…ありがとう」

オルカからオシャレして来いと言われ、それなりの格好できた。
アオは、やはり藍色が特徴でより一層、アオの美しさを引き出すワンピースを着てもらったが、思った以上に美しく可愛いらしくなってる。

「ん?セラ、師匠はどうした?」
「師匠はもう少ししたらつく…」
「待たせたな」

後からきた師匠。
その格好は今まで見てきた護服とは違い、見た事ないかっこいい姿で違和感なく、それなりに映えてる師匠が来た。

「揃ったな!じゃあ行くか!」

オルカ先頭に店の中に入っていく。
中に入ると少しオシャレで大人の雰囲気がある店内だ。

「アオとマツリは久しぶりだから、折角だし2人で話せよ、俺とセラと師匠さんは野郎3人で話そう」
「え?いいの!?」

アオがちょっと嬉しそうに聞いてきた。

「あぁ、マツリと話すのは久しぶりなんだろ?話してても構わない」
「やった!!」

マツリとアオは俺達とすぐ近くに座った。
俺達も座ると、ウェイターから注文を聞かれ注文をした。

「ねぇ、アオ」
「なに?」
「セラとどう?上手くいってる?」
「上手く?んーどうだろう…上手く言ってるんじゃないかな」
「いいなぁ…私、オルカの事好きなんだけど…誰かを好きになるのは初めてで…たまにどうしたらいいのか分からなくなって、オルカに素っ気ない態度とってしまうんだけど…」
「マツリも初彼なの?私もだけど…まぁ、初めてだと分からなくなる時もあるよ…。仲良くみえても、たまに意見のぶつかり合いして喧嘩しちゃうし…」
「え?喧嘩するの!?意外…」
「するする!この前なんか、私が見つけた綺麗なサメの歯をセラがゴミだと思って捨てちゃってさ…首飾りにしようと思ったからさ、もう大喧嘩!!まぁ、あの時の私は少しだけ言い過ぎて、セラには謝ったけど 」

隣のアオ達の会話が俺達の耳に入る。
しかし、内容が内容だからかさっきから師匠の視線がかなり痛い。

「はは!やはり、メス同士会話させた方が少しは楽なようだな」
「……」
「おかげでこっちはかなり痛い思いしてるけどな」
「まぁ、そんな事は言うなって、今日は俺の奢りだからな、セラも師匠さんも食えって」

オルカに言われ、運ばれてきた料理を食べ始める。
出された料理は、鯨肉の料理でそれをナイフで食べられる様に切り、フォークで口に運んだ。
美味い…アトランティスで人気な店なのは伊達ではないようだ。

「美味いな、よく美味い店を見つけたなシルキーの息子」
「この前、マツリとデートした時にたまたま入ったんだが美味くて、それで俺のお気に入りな店に…てか、師匠さんは俺の母を知ってるんですか?」
「知ってるもなにも、俺はシルキーとは幼なじみだったからな」
「「え!?」」

意外だった、師匠にも幼なじみがいるとは知らなかった。
でも、同じクジラに近い一族同士だからありえるのか?

「その、師匠さんは昔の母とか…覚えてます?」
「覚えてる…アイツは幼い頃から活発でメスなのにオスよりも強かった…。そして、その強さで弱い者を助けていた」

師匠が食べながら懐かしそうに話す。
その表情が何故か柔らかくて、師匠からしたらオルカの母親は、大切な幼なじみだったのだろう。

「俺も子どもの頃は弱くてな、ただでさえ肉食のクジラ一族なのに、弱いから周りから虐められていた。その度にシルキーが助けてくれてな…今でも覚えてる。あの時の姿が、子どもながらも戦士みたいな姿だった」
「そうなんですか…てか、最強の双璧と言われた師匠さんが昔はいじめられっ子だったのは意外でした」
「俺があんまり言わないからな…。それに、シルキーが同族争いで亡くなったと聞いた時はどうしようもなかった」
「……」
「アイツの事だから、一族を命かけて護り抜いたんだろうってな…そのおかげで、息子のお前とラキエルがいる」

師匠は少し切なそうながらも懐かしむような表情になった。
よっぽど思い入れがあったのだろう。

「師匠はオルカの母親をメスとして見なかったんですか?」
「番としてのメスとしては見なかった。それよりかは憧れてたな。アイツの周りは常に仲間が居た…俺は不器用だからな、周りとは馴染めなかった…そのおかげかこんな感じにはなってるがな」
「…いや、しかし師匠さんとセラ本当に似てるんだなぁ」
「どうした急に」
「いや、エスパーダからお前の子どもの頃の話を聞いた事があってな…エンヴィーとお前が幼なじみなのは知っていたが、エスパーダと幼なじみなのは知らなかった」
「……」

エスパーダの奴、俺が知らないところで俺の話をしていたのか。
アイツらしいと言えばアイツらしい…。
ただ、アイツのことだから嫌な予感しかしない。

「セラも皆から嫌われていて、俺がセラの1番の親友になったんだとか言ってたな」
「……」

意外だ。
エスパーダが珍しくまともな事を言った。
エスパーダが言ったことは本当で、エンヴィーと同様、エスパーダと会ったのは一族が滅びる前だ。幼かった俺は術士一族なのを隠し、他の一族の子どもと一緒に学校に行っていた。
しかし、術士の一族の為魔力はないに等しく実技だけは最下位。
魔力もないし古代種族なため、周りから忌み嫌われていた。
独りだった俺にいきなり話しかけてきたのがエスパーダだった。
エスパーダは俺と知り合った時には、両親を失っており、独り身で勉強も実技も最下位…すなわちドベだ。
そんなエスパーダも周りから馬鹿にされ忌み嫌われていた。
忌み嫌われた者同士だったのか分からなかったが、エスパーダとエンヴィーと俺は何故か仲良くなり、まるで本当にの兄弟のようだった。
エスパーダは馬鹿な面とかはあるが、曲がった事が嫌いで、特に弱い者いじめが嫌いで、よくいじめられていた俺を助けていた。
周りから馬鹿にされても、忌み嫌われていても、自分の信念を持つエスパーダにあの時は憧れていた。
一族が滅びるまでは…。
一族が滅びてからは100年は合わず、7天の試練の時に久しぶりにあった。
子どもの頃とは変わらずにな…。

「……」
「おい、セラ」
「あ、すまない。昔のことを思い出してな…。エスパーダにしてはまともな事を言ったんだな」
「アイツは馬鹿な面もあるが、仲間思い出熱い信念をもつ良い奴だ。まぁ、たまに師匠のイッカクにしばかれる時はあるが」
「まぁな、そうそう…今日は思い出話もそうが、ちょっと2人に聞いて欲しいんだ」
「……」

オルカが途中から真面目な表情になった。
オルカが真面目な表情する時は、あんまり良い事がない。

「エスパーダやイッカク、クレイオーとシャクナゲ戦みてなんか変なの感じなかったか?」
「オルカ、お前も感じたのか?」
「あぁ、俺達7天と深海7天はほぼ同じ力同士な筈だ…戦えば10分以上はかかるはずなのに、かからずに終わってる。俺達が勝ってな…」
「俺はアイツらの数人は戦う姿を見た事があるから、あの闘いで得意魔法を出さなかったのが、歯痒い何かを感じた…わざと負けてる感じが」
「……」

師匠が俺達の会話を聞いて、知ってるような沈黙をする。

「師匠…何か知ってるんですか?」
「あぁ、だが今ここでは言えない…。ヤツらがいる可能性があるからな。言えないが、オルカ」
「はい」
「明日の闘い…気をつけろ」
「あ、はい」
「……」

師匠がここで言ったら、深海の誰かに聞かれてもおかしくはないのは確かだ。
それに、師匠が気をつけろと言う時は、本当に何かが起きてもおかしくないし、起きるぞという意味合いがある。
師匠は多分全て知っている。

そんな重い空気とは裏腹に、隣の席のアオ達はメスの会話で華を咲かせていた。
俺達もこれ以上、この事を聞くのはやめた。
そして、出されてくる料理を堪能し、オルカの奢りで店を後にした。

「オス同士の会話どうだった?」
「……」
「まぁ、良かった」
「なんだよー…その反応…まぁ、良かったなら良かった!…ね!父さん」
「ああ…アオの所はどうだった?同い年のメスと話して」
「楽しかった!あんな事やこんな事色々話した」
「そっか」

アオは嬉しそうに俺の手を引く。
師匠と俺達は夜のアトランティスの道を歩き、住処に帰っていった。
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