黒猫と白薔薇
 夏の陽が眩しい。



 朝も暑いのも苦手だ。そのために強めの氷魔法を部屋にかけてもらっているから、快適に過ごせていてありがたいのだが、ひとつだけ問題がある。


「おい」

「なあに?」



 愛くるしい顔で、少女が小首を傾げる。どんなに教えてもまるきっり理解しない。それがまた、余計に頭を痛くさせる原因でもある。


「なんでいつも俺の上に乗っかってるんだよ。一秒で降りろ」

「や! 暁の上好き」

「俺は好きじゃない」

「暁、遊ぼう?」

「……お前。本当に人の話聞かないね」


 全身真っ白な長い髪の少女は、“白薔薇姫”と呼ばれる癒しの力を持つ。カナタと共に少女専属騎士をしているが――毎回追いかけっ子になる。


 まるで、小さな子どもの面倒でも見ているかのようだ。



 本当に自由奔放で、自分の非じゃない事をここ数日ですでに痛感中だ。


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