君に恋した、忘れられない夏
四年前に亡くなったおじいちゃんのお墓参りは毎年お母さんと行っていたけど、おばあちゃんちに来てお線香を上げたのは今日が初めてだ。




「わあ、おばあちゃんの料理久しぶり!いっただーきまーす!」




居間に行くと、机いっぱいにおばあちゃん特製の料理がたくさん並んでいて、早速肉じゃがに手を伸ばす。




「んー美味しいー!」




お母さんとはまた違った優しい味のする肉じゃがをパクパクと食べていく。


うっかりしていたら一人で全部食べてしまいそうだ。




「ひまちゃんは一ヶ月こっちにいるんだろ?」


「そう。私たちは仕事で明日には帰っちゃうんだけど、陽葵はいたいって」


「夏休みだし、久しぶりに来たからどうせならしばらくこっちにいよっかなって!友達と会えないのはちょっと寂しいけど、七月のうちに遊んだから、一ヶ月くらいなら我慢できる!」


「陽葵は本当、おばあちゃんが好きだなあ」




お父さんに曖昧に笑いを返して、芋の煮物を口に入れる。


…本当の理由は、それだけじゃないんだけど。



この町にいたい本当の理由は、ある人に会いたいから。ずっと忘れられない、初恋の人。
< 2 / 36 >

この作品をシェア

pagetop