君に恋した、忘れられない夏
私が流星群をこの目で見たのは、人生であの夏の夜一度きりだ。


今でも鮮明に思い出せるくらいあの景色は頭にこびりついている。




「あの、もしよかったら…一緒に見に行きませんか?俺、すごくよく見えるとこ知ってるんです!」


「…ごめんなさい。私、行くところがあるので」




もしかしたら、なぜかわからないけどそんな予感がさっきから頭をチラついている。



一度家に帰ってから楽な半袖ショートパンツ姿に着替えて、家を出る。


夜の砂浜は流星群を見る人がちらほらといたが、それも奥まで歩いていくとすっかりいなくなった。



相変わらず細くて上がりにくい階段をなんとか上りきり、いつものベンチに腰掛ける。




「昴」




久しぶりに呼んでみたその名前は、誰にも届くことなく真っ暗な空に消えていく。




「…あ」




まるで私の呼びかけに返事をするかのように、一筋の光がすっと流れた。
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