小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「言えなくて……それに一度お父さんに会って、どういういきさつでひー君が亡くなったのか教えてもらおうと思っていたの。実は住田先生のところへ司書として本を貸し出しに行っているの。先生とはお目にかかって昔の話をしたわ」

「お前の亡くなった母は先生を逆恨みして弟の死を乗り越えようとしていた。でもそれは違う。お前の弟が亡くなったのは先生のせいではないと思う。急変したんだ。間に合わなかったんだよ」

「やっぱりそうだったんだ……」

「お前の母は仁史が亡くなっておかしくなった。当時周りに先生のことを吹聴して結局病院がつぶれてしまった。謝りたいのはこちらだったんだ。先生が病院をたたむというときに、一度先生へ謝りに行ったんだよ」

「院長先生もお父さんが来てくれたことを話していた」

「その時終わっていることなのに、先日お前のことで会いに来た先生の息子さんは、仁史のことを申し訳なかったと父親の代わりに頭を下げていた。住田先生から当時のことを聞いて、お前が亡くなった男の子の姉だとわかったそうだ。住田先生は最初お前に気づかず、知らなくてお前に先生と別れさせるため電話してきたりしたそうだな」

「そんなことまで話したの?弘樹先生……」
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