会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。

まだ見ぬ元夫からの離縁状

「おまえとは離縁だ」

 その日、届いた手紙の冒頭である。

 差出人は、一度も会ったことのない人物。十八歳でこのカニンガム公爵家にやって来てからはや五年。その間、彼はずっと王都にあるカニンガム公爵家の屋敷でレディたちと贅沢のかぎりを尽くしていた。

 執務室の開け放たれた窓の外に視線を向けた。高台にあるこの屋敷の二階から、周囲を見渡すことが出来る。
 向こうに広がる小麦畑は、銀色に輝いている。視線を上空に転じると、目に染みるほどの青空が広がっている。
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