会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。

手を放しなさい

「ちっ! 田舎者ども、ウダウダうるさいんだよ。おれは、このカニンガム公爵家の当主。大領主様だ」

 バートは、やはりわたしの名を知らなかった。

「カニンガム公爵家の当主? 大領主様? クリス、そうなのですか? あなたは、このカニンガム公爵家の管理人としてもう四十年以上勤めて下さっています。そこにいる彼の申告通りなのですか?」

 自分でも嫌味ったらしい、と実感しつつ言わずにはいられなかった。

 正直なところ、もう嫌気がさしていた。こんな男、さっさとこのカニンガム公爵家の屋敷から放り出したい。

 どうせことを分けて話をしたところで、その内容のほとんどを理解出来ないでしょうから。

 それなら、強制的に退去してもらった方が時間と労力の節約になる。
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