君と夢に跳ぶ恋
「だからね、ママは茉璃ちゃんにお絵かきなんてくだらないことで時間を無駄にして欲しくないのよ〜、パパだってきっとそう思ってるわ。パパが怒るのはね〜、あなたを立派な子に育て上げるためのしつけなのよ〜、
し・つ・けなの」

笑顔でお母さんは「しつけ」という3文字をやけに強調した。

「茉璃ちゃんはね〜、いっぱいお勉強して、いい高校に入って、いい大学に入って、有名企業に就職して、23歳になったらママとパパが決めた人と結婚して、ハネムーンはハワイへ行って、25歳で子供を2人出産、上が男の子で下が女の子がいいわね〜、それでその子達もあなたのような人生を送らせるの。完璧だと思わない?」

早口でまくしたてられるお母さんが決めた完璧な人生プラン。

「ママ達が茉璃ちゃんに望むことはこれだけよ。ママ達が全部決めてあげるから茉璃ちゃんはお勉強だけ一生懸命に頑張ってくれればいいの。茉璃ちゃんはいい子だからできるでしょう?」

私の人生なのに私が決めることのできない人生プラン。

「ね、わかった?」

もう何十回、何百回、何千回と聞かされてきたプラン。

「でも・・・」

咄嗟反論しかけると、

「わかったでしょ?」

お母さんが有無を言わさぬ感じで声を少し強める。

「・・・。」

「ねぇ茉璃ちゃん、ママ達は茉璃ちゃんに十分優しいでしょ?茉璃ちゃんが失敗したあの日だって笑って許してあげたじゃない。」

答えない私をみてさらに追い討ちをかけてくる。

“あげた” “あげる”
お母さんもお父さんもいつもそう言う。
あたかも私たちがこんなにやって“あげてる“んだから言うことを聞くのは当然だとでも言うように。
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