女風に行ったら、モテ期がきた

『嬉しい』の共有

引っ越しをして既に半年。問題はほぼ全て片付き、悠二君は先月から本社へ異動した。

約半年の間、四六時中一緒にいたこともあって、悠二君との関係はだいぶ落ち着いたものになっていた。

なのに最近、悠二君がやたらと結婚を迫ってくるようになり、多少困惑気味である。

「今までは俺が周りを牽制し続けてたから、ミキさんは自分がどれだけ男共を惑わしているかを全然わかってないんですよ!」

何を大袈裟な、、とは思うが、近所の男の子を変質者に変えてしまった過去を持つ手前、強くは出られない。

「結婚してミキさんが正式に俺の妻だって証明できたら、俺も少しは安心できるのに、、そんなに俺と結婚するのが嫌ですか?」

「そんなことないよ?悠二君のことは大好きだし。ただ、なんで今のままじゃ駄目なのかがわからないっていうか、、」

「やっぱりミキさんは全然わかってない、、」

この時、私を説得するのを諦めたかに思えた悠二君は、少々強引過ぎる手段を選択した。

「ミキさん、俺のこと好き?愛してる?ずっと一緒にいてくれますか?」

しばらくの間、やたらと自分への愛情を確かめてくるようになった悠二君を、情緒が不安定なのかな?と思っていたのだが、それは間違いだった。

彼は情緒が不安定だったのではなく、文字通り、私の愛情を確認していたのだ。

そして、結婚してもおかしくないほど私が悠二君を愛してると確信を持った彼は、次の行動に移った。

、、、、、。

ある日、飲み過ぎてるわけでもないのに気分が悪い日が続き、私はあることに気付いた。

「来るべきものが来ていない、、」

悠二君とそういう関係になってから、積極的に考えてなかっただけで、妊娠の可能性について全く考えていなかったわけではない。

相談したわけではなく、避妊を彼に丸投げしていた私が、彼を責める権利はないだろう。

そして何より、彼との間に子供ができたかもしれないと知り、最初に浮かんだ言葉は、、『嬉しい』だった。

私は仕事中の悠二君に電話した。彼にこのことをすぐに知らせたかったから。彼とこの『嬉しい』を共有したいと思ったのだ。

『嬉しいと感じたことを共有したい』

いつかの杏子の言葉が頭に浮かぶ。

私は間違いなく、彼のことが好きらしい。

「あ、悠二君?仕事中にごめん。私、悠二君のこと凄く好きみたいなの。だから、私と結婚してくれませんか?」

(完)
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