君は私のことをよくわかっているね

1.わたくしでは、ダメでしょうか?

 この5年間、ほとんど毎日同じ疑問を自分に投げかけてきた。
 『わたくしには陛下がわからない。どうしてわたくしじゃないのだろう?』って。


「――――今夜は陛下のお渡りがございます」

「まあ、陛下が⁉」


 会話をしつつ、わたくしは心のなかで大きくため息をつく。


(ああ、本当になんて羨ましいの)


 目の前には豪華な衣装を身にまとい、ニコニコと満面の笑みを浮かべる女性が一人。真っ白な肌、赤味がかった長い髪、いかにも気の強そうなキリリとした瞳の持ち主で、豊満な肢体が自慢の18歳。名を魅音といい、現皇帝である龍晴様の妃の一人だ。


「そうと決まったら、急いで準備をしなくては。陛下に喜んでいただくのが妃の仕事ですもの! 政務で疲れた心と体を癒やし、次の世継ぎを生む。ああ、なんて素晴らしいお仕事なのでしょう? 桜華様もそう思いません? ――――なぁんて、桜華様は妃ではなく、この後宮の管理人でしたわね。一緒にしたらいけませんわね」

「……ええ、そうですわね」


 苛立ちを押し隠しつつ、わたくしは微笑みを貼り付ける。


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