君は私のことをよくわかっているね
「そもそも、桜華には私の愛情をきちんと伝えている。孝明も聞いているだろう?」

「それは……陛下の仰るとおりなのですが、世の中には言葉だけでは伝わらない感情もございます。それに、妃たちのなかには、陛下に特別に思われている桜華様に対して、複雑な感情を覚えている方も少なくありません。桜華様は妃ではないのに、と」

「ほぅ……それはつまり、私の桜華に醜い嫉妬心を向けているものがいる、ということか?」


 ゾワリと私の中の龍が暴れ出す。
 桜華に嫉妬? とても許されることではない。
 桜華は特別なのだ。私にとって唯一無二の愛しい存在だ。たかが妃が――自分が桜華と同じ土俵に立っていると考えること自体が愚かしい。


「おそれながら――――それが事実でございます。現に、妃に昇格できないからと桜華様を格下扱いする方もいらっしゃいますし、陛下に抱かれることを自慢するような品のない方も……」

「それは聞き捨てならないね」


 桜華が格下? そんなこと、絶対にありえない。許せるはずがない。


「少し、思い知らせてやらなければいけないね。孝明、君もそう思わないか?」


 呟けば、孝明がブルリと体を震わせる。それから彼は、深々と拱手をするのだった。
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