君は私のことをよくわかっているね
 そもそも、この国で『龍』を名乗ることは皇族にのみ許された特権だ。けれど、天龍なんて皇族の名前、わたくしは聞いたことがない。


(もしかして、前陛下には異国人との間に隠し子でもいらっしゃったのかしら?)


 それにしたって、成人している以上、許可なく後宮に入れるはずがないし、龍晴様とはさして似ていらっしゃらない。もちろん、おふたりとも恐ろしいほど美しいのだけれど。


「会いたかった……ずっとずっと、君だけを求めていた」


 その瞬間、天龍様が力強くわたくしのことを抱きしめた。
 一瞬だけ見えた彼の表情は、切なげで、愛しげで、思い出すだけで涙が滲むほどだ。
 そしてそれは、わたくしが求めてやまない感情――――愛情だった。


(この人は一体、誰なのだろう? どうしてわたくしを知っているのだろう? ――――求めてくれるのだろう?)


 疑問に思うことは山ほどある。人違いなのかもしれない。
 けれどわたくしは、天龍様の腕を振り払う気にはなれなかった。
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