君は私のことをよくわかっているね
「たかが後宮の管理人、ですか」

「ええ、そうよ! あなたなんて、陛下に抱かれたこともないくせに! 勘違いをなさらないで? 陛下の子を孕み、国母になるのはこのわたしよ! あなたなんて、女性として見られることすらない、魅力のない存在じゃない! あなたは自分の采配次第で陛下のお相手が決められると思っているかもしれないけど、お生憎様。わたしが皇后になったら、あなたを後宮から排除してあげるわ!」


 勝ち誇ったように魅音様が笑う。あまりの敵意に胸が締めつけられる。


「魅音様、わたくしは……」

「桜華が後宮を去ることはない」


 その場にいた全員が、一斉に背後を振り返る。
 怒りを押し殺した低い声音。冷たく苛烈な視線。東屋に緊張が走った。


「龍晴様……」


 そこには後宮の主――龍晴様がいらっしゃった。
 一斉に拱手をする妃たち。わたくしも拱手をしつつ、魅音様を横目で見遣る。


「陛下、これは、その……」

「君が皇后になることもない。後宮から排除されるのは魅音、君のほうだ」


 龍晴様が宣言する。わたくしたちは言葉を失った。
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