君は私のことをよくわかっているね
「妃にしてほしい、などと贅沢は申しません。龍晴様がお望みなら、わたくしは後宮の管理人のままで構わないのです」


 なんて――本当はそんなの嘘だ。

 わたくしは、龍晴様に愛されたい。
 彼の唯一無二の存在になりたい。
 彼の子供を産みたい。
 幸せになりたい。

 ――――そう思っているのに。


「桜華、私は君を愛しているよ」


 龍晴様が耳元で囁く。
 けれど、彼の表情を見た途端、わたくしにはわかった。

 どこか呆れたような笑顔。瞳は温かくて優しいけれど、それはわたくしが欲している感情とは異なっている。


「――――承知しました」


 わたくしが彼に女性として愛される未来はないらしい。


(こんなことなら、聞かなきゃよかった)


 静かに涙を流しつつ、わたくしは龍晴様を魅音様の元に送り出した。
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