恋愛体質
「いまさらながらだけど、超テキトーな格好なんだけど大丈夫かな?」

 私は一応先に言っておいた。

「大丈夫ですよ。気合い入れるような合コンとかじゃないし。」

 絵里はそう言ったがコートを脱いだ彼女は明らかにいつもよりオシャレをしていた。

 微かにラメが入ったパールピンクのニットワンピは彼女のふんわりとしたヘアスタイルによくマッチしていた。

 絵里はあまり器量がいいとは言えないが、今日は最大限とまではいかなくとも、それなりの努力をしてきたのが感じられた。

 奈津美はといえば、あまり男性受けするようなスタイルではないけれど、いつもファッションにはこだわりが感じられた。

 奈津美には奈津美らしいスタイルがあった。OLというよりは個性的なブランドの販売員といった風情。

 今日も腕には極彩色のバングルが幾重にも巻かれていて、ついそこばかりに見とれていると眩暈がしそうになってきた。

 私は自分の服を改めて見直して密かにため息をついた。
 しかも・・・

 私だって絵里の器量をとやかく言えた義理じゃない。自分でもブスというカテゴリーに入るほど酷くはないとは思うがごくごく十人並み。

 目がぱっちりくっきりしているわけでも、ナチュラルなままでも睫毛が長くてクルンとしているわけでも、官能的な唇でもなかった。

 たまに素材の光っている人に限って、ジャージに眼鏡でろくに化粧もしない、信じられないような干物スタイルで人前に出てきたりすることがあるが、あれは自信の裏打ちだと私は思っている。

 心の奥で(私はこんなテキトーな格好してても綺麗)という自信があるのだ。

 みんながみんな、あんな無謀なことが出来るわけではない。そんなチャレンジャーな振る舞いはごく1部の特権階級的美人にだけ許されるプライオリティーなのだ。

 そう。私みたいなタイプは努力してなんぼなわけで、シンプルなファッションで返って色気が匂い立つというわけではない。

 それは十二分に自覚していたはずなのに・・・最近の私ときたら女子力のカケラもない。不覚。
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