神様の寵愛は楽ではない

2-3、

 一体これは何なのか。
 こわごわと引きずり出すと、全身毛のないむき出しの肌は桜色で、傷だらけのやせっぽっちの姿の珍奇な生き物。
 男が驚愕したように、珍奇な生き物も驚いたようで、目を見開き手足らしきものをばたつかせた。

 「……お前が暖めて助けてくれたのか?」

 その桜色の生き物は、「ニャー」と鳴く。
 僧侶はそれを愛し、いつくしんだ。
 大きな寺の住職となっても、命の恩人として美奈の寿命が尽きるまで決して手放さなかった。


 美奈は、様々な命を何千回も生きた。
 同族からは醜いもの、生意気な者と毛嫌いされることが多かった。
 だけど生きるのに一生懸命な姿は、他の生き物たちを惹き付けた。
 愛され慈しまれてその命をまっとうしていく間に、次第に、美奈は美しさを、肉体の健やかさを取り戻していく。
 魂に刻まれた呪いが、ほんの少しずつほどかれていく。


 そしていつからか、美奈は再び、人としての生を得ることになった。
 呪いは依然に有効で、とても美しいといわれるような者ではなかった。

 かつての美奈は、そこにいるだけで、人から好かれ賞賛され、求められた。
 今の美奈は、好かれるように必死に努力し、学び、体を動かし、自分を磨き、相手を観察しなければならなかった。

 なぜなら、美奈の全身にはどうやっても消せない桜色のアザが顔から足の裏までまだら模様に張り付いていた。
 好きになった人はいる。
 だけどもいくら努力し己を磨いても、美奈が愛する者は決して美奈を見ることがなかった。

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