いつも側にいてくれたね


俺たちが高校受験に向けて塾に通っている時、直生が突然塾を辞めたいと言った。

そして私立高校の受験はしない、と。

俺は納得できなかった。

「直生、なんで受験しないって言い出したんだよ」

「僕に受験は必要ないんだ。僕が大切なのは夏芽と一緒にいることなの。夏芽と同じ高校に行って夏芽を守っていたいんだ」

「なに言ってんだよ。それは俺だって同じ気持ちだよ。でもお母さんたちの気持ちを考えたら受験しないって選択はできないだろ」

「遥生、本当にごめん。僕だけでも夏芽の側にいさせて欲しい」

直生を問い詰めても夏芽を盾にして話が進まなかった。

俺は直生にはっきり聞いたわけじゃないけど、直生は夏芽が好きなんだ。

俺だって。

俺だって全然知らない学校になんて行きたくない。

俺だって夏芽の側にいたい。

俺だって夏芽が好きなのに。

それでも俺は受験した。

夏芽とは別の学校に行くと決意したんだ。


夏芽と別の高校へ行ったら、きっと夏芽と直生は付き合い出すんだろうな、そう思っていたんだ。

俺が夏芽への感情を閉じ込めてしまえば済むことなんだ、夏芽が幸せになるならそれでいいんだ、と思って今までいたのに。


なのにどうして夏芽に彼氏ができるかも知れないことを直生は許してんだよ。

どうして夏芽に何も言わないんだよ。

どうして夏芽の相手の男をけん制しないんだよ。

どうして・・・夏芽に応援するなんて言ってんだよ。


< 30 / 120 >

この作品をシェア

pagetop