いつも側にいてくれたね
直生の企み *直生*


提出期日が昨日までの書類を遥生は提出しなかった。

僕は無造作に置いてあったその書類を読んで、ある考えを思いついたんだ。


「湯川、書類はよく読んだか? 書類を忘れてきたのならまずは口頭で返事をくれてもいいんだぞ。どうするんだ」

僕を遥生だと勘違いした先生と進路指導室に来ていた。

「僕、行きます。手続きを進めてもらえますか」

「おお、そうか。良く決めてくれたな。これから忙しくなるぞ。英語の勉強はしっかりやっておけよ」

「はい。頑張ります」

そう先生に言って深くお辞儀をした。

「今日の湯川はえらく素直だな。いつもの毒舌が出ないとかえって拍子抜けするな。はははっ」

遥生は先生に対していつもどんな態度で接してるんだよ。

毒舌って。

そんな態度の遥生が学校代表に選ばれたのが不思議だよ。

「じゃあ湯川、この書類の束をご両親によく読んでもらって、サインをもらって来てくれ。その後に面談やらオリエンテーションがあるから、大変だけどよろしく頼むぞ」

「はい。これからもご指導よろしくお願いします」

先生からもらった書類の入った封筒の表紙には


【短期留学制度について】

と書いてある。

遥生、勝手にごめん。

それでも夏芽のためなら遥生を敵に回したっていいんだ。


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