奇跡をくれた君へ
励ましの言葉
 

それをきっかけにして、私と木島くんは時々メール上で話すようになった。学校生活のこと、友達のこと、道で見つけた猫のこと、いいなと思った景色のこと。なんてことない内容だけれど、文字の端々に彼の人柄が滲み出てきているような気がしてそれだけで楽しかった。


――今、なにしてる?

――学校だよ

――俺も、午後の授業だるくて大変

――それ、わかる。次国語なんだよね

――それは寝落ちするやつ

――本当に危機的状況だよ



話していくうちにお互いが、同い年の高校一年生であることがわかって、そこから自然と敬語は外れた。国語が苦手で、数学が好きと得意不得意科目も一致していたりして、共通点が多い。唯一違かったのは、私が体育が好きで彼は苦手ということくらいだった。

考え方も似ているのか、どちらかが画像を送ると同じような感想が数秒違いで並ぶ、なんてこともよくあった。


偶然高校も近くで、ちょと運命を感じなくもない。今までどこかですれ違っていたのかもしれないとか、可能性を考え出すと止まらなくなった。


「芽生、なにしてんの」


後ろから、声をかけてきたのは咲だった。驚いて思わずスマホの画面を机に伏せて隠す。彼女は不思議そうに首を傾げた。


「どうした?何か見られちゃいけないことでも?」

「ちょっとね」

「あ、わかった男でしょ」


言い当てられて、視線を逸らしてしまった。これでは、答えを言っていなくても、はいと言っているのと同じだろうに。ますます咲の顔が見れない。説明しようにも、ここは教室なので遠慮したいところだ。すると何か察しがついたようで、


「ま、いいけど……後で、詳細聞かせてね」


最後の方は、小さい声で耳打ちをするようにして自分の席の戻っていった。咲のこの気遣いに心の中で、感謝を表した。


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