拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「本日を以て練習を見に来ませんのでご安心下さい」

 レイ様はこちらで練習する事はもうない。と言っていましたし、練習は本部に練習場があるそうで、そちらに行きますもの。
 
「……ほんっと、生意気な子ね。メイドが生意気なわけだわ!」


 そうですわ! アデール!!


「うちのメイドに何か?!」

「少しお話をさせてもらっただけよ? 本当っ、口答えばかりするからつい、」

 ふふっと嫌な笑い方をしましたわ。

「アデールはどこです!」

「教えてあげるわ。とっとと連れて帰って頂戴」

 にやり。と笑う子爵令嬢に油断してしまいました。しゅっと、スプレーのようなものをかけられ、意識がなくなりかけて……これではレイ様に……そう思いイヤリングの片方をそっと取り、座席の下に投げました。気がついて……レイ様。


 うっすら意識はあるのですけど身体がうまく動かせなくて……


 女の人の声が聞こえる──


 
 
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