拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

 お庭を堪能してからお茶会のスタートです。わいわいと話をしているとおばさまが来て挨拶をしました。

「楽しそうね。お邪魔じゃなかったら少しお話ししましょう」

 皆、勿論ですわ! と返事をする。


「いつもセシリーと仲良くしてくれてありがとう。リュシエンヌちゃん、今度は婚約者も連れて遊びに来てくださいな」

 おばさまは小さな頃から良くしてくれて、おばさまと呼ばせて貰っているのです。
 
「おばさま、皆さん。お話がありますの」

 きょとんとする一同。寝耳に水? といった感じでしょうが……言わないといけませんわね。

「実はこの休みの間に婚約破棄されてしまいましたの」



「「「「え!?」」」」



 固まってしまいましたわね……

「驚かれて仕方ありませんわ。理由は性格の不一致ですのよ。まだ婚約して三ヶ月ですからお互い愛情もありませんでしたし、ここ何日かで十分落ち着きましたのでご安心くださいませ。書類も提出しましたので、わたくし婚約者募集中ですのよ」

 心配かけまいと、婚約者募集中なんてはしたない事まで言ってしまいましたわ……

「性格の不一致だなんて……失礼な令息です事! しばらくコリンズ伯爵家とはお付き合いしたくありませんわ!」

 おばさまはぷんぷん怒っていますわ……

「リュシエンヌは美しくて優秀で私の自慢の親友なのに、コリンズ子息一体何様なのよ!」

「許せませんわ!」
「女の敵ですわ!」

「……皆さん怒ってくれてありがとうございます。でも良かったのですわ。結婚をしてしまったらやり直しはききませんでしょう? たった三ヶ月ですもの。まだやり直しは出来ますわ。わたくしってラッキーですのよ」

 ふふっと。笑ってみた。

「リュシエンヌちゃんがそういうのなら……でも一方的な婚約破棄は家の信頼を落としてしまいますわ。許せる事ではないですから」

「……コリンズ伯爵家は令嬢がいるから今後の対応次第で大変な事になりそうね」

 貴族社会とは噂が大好きですからねぇ。無傷というわけにはいかないと思いますが……

「コリンズ伯爵は立派な方ですし、奥様も良い方です。暫くは厳しい目で見られるかと思いますが……」


 楽しいお茶会が私のせいで台無しになるのも耐えられませんので、話題を変えなくてはいけません。

「わたくしからの報告は終わりですわ。いずれ分かることですから皆さんに報告したまでです。この話は終わりにしてくださると助かりますわ!」

「そうね。リュシエンヌちゃんならすぐに相手が決まるわよ! なんならうちの息子も候補に入れてちょうだい!」

「お母様っ! お兄様にリュシエンヌは勿体無いわよ!」

「そうね……」

 おばさまとセシリーのおかげで場の空気がまた明るくなった。持つべきものは友だわ!
 
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