前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す

十転び目 襲撃の夜

 火事は消し止められ、幸いにして怪我人はひとりもいなかった。

 集積場所に捨てられたごみの中に、可燃性のものが含まれていて、夏の日差しで高温となり、発火したのではないかと思われたが、詳しくはわからない。

 火災現場に隣接していた日暮家は、風向きが味方したのか、建築資材の質がよかったのか、外壁を焦がした程度で済んで、消防隊員には奇跡だと言われた。

 だがススのにおいがひどく、火元側に面した和室と二階の公花の部屋は、使用不可能。反対側にあったリビングだけは、なんとか使うことができそうだ。

 とにかく人への被害がなくてなにより。家を修理するまでどうするかなどの問題は、明日考えることにして。

「公花、本当に大丈夫? 夏とはいえ寒くないかしら……」

「平気よ、お母さん。とにかく今日はゆっくり休んで。おばあちゃんも」

 ほかの部屋から無事だった荷物を運び込んだリビングに、三人(プラス一匹)が寝るには手狭ということで。

 本宅には母と祖母を残し、公花は庭にある倉庫の中の荷物をどけて、そこで夜を過ごすことにした。
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