没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「この部屋を守るためだけに…代々受け継がれていたものですわ。ミカリオンの初代国王を愛してしまった、コルタナの魔女が…自分の子孫のために…残した部屋」

「そ、そんなことが?」

「ええ。突然文字が浮かび上がってきたのです。どうやらわたしはコルタナの魔女の子孫らしいです。自分が叶わなかった王への想いを…子孫に残したのですわね。まんまとひっかかってしまいましたわね」

フッとフィリシティが笑った。

レオンはふと嫌な考えが頭をよぎるのを感じた。
フィリシティ…もしや…?

「けれど、ひっかかってしまってよかったですわ。生涯…忘れられない人と。出会えたのですもの」

杞憂だったか。

レオンは笑ってフィリシティを抱きしめた。

「俺は今日で生まれてからずっと一緒だった緑の魔石を無くしてしまった。けれど…そのかわり1番大事な…ものを手に入れた」

「レオン様?」

「最愛の人の…愛情」

そういうとレオンは、フィリシティの唇にはじめて、自分の唇を重ねた。

誰が見ているかなど気にならなかった。

「結婚式まで待てなかった」

「わたしも…もう待てません」

2人は周りの人々が呆れ果ててその場所を去ってもまだ抱きしめあったまま、長いキスを…し続けていた。


その後、ミカリオン王国は、長く長く栄えたという話だ。



〜Fin〜
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