ブラスバンド! 〜青春は吹奏楽部で〜
「……皆さんは、こんな中途半端な演奏でコンクールに出るのですか?」
 顧問の先生が話し始める。声はいつもの優しい声なのだけど……でも何か含みがあるような言い方で……
「私であったら、こんな中途半端な演奏ではコンクールには出たくありません。審査員の方たちも、中途半端で、頑張りが見えないような今の演奏ではいい評価をくれるとは思いません。せめて良い音か悪い音のどちらかにしてください。悪い音であっても、本気で頑張ったなら、中途半端な音よりは評価してくれると思います。逆に、良い音であっても頑張りが見えないような演奏では本末転倒です。一番良いのはもちろん『良い音で、すごく頑張りが見える演奏』ですが、一番悪いのは、『悪い音』なのではなく、『良い音とも悪い音とも言えない中途半端な音』です。先程も言いましたが、悪い音だったら皆さんの頑張り次第では救いようのある音ですが、中途半端な演奏だと、それが『良い音』であっても、評価は良くならないと思います。」
 ……先生の言う通りなのかもしれない。確かに今はもちろん私もなのかもしれないけれど、一人一人の頑張りがあまり感じ取れないというか……「とりあえず吹けばいい」みたいに思っちゃってるのかも。だからどうしても悪くはないけど良くもない音になってしまって、頑張りも感じ取れなくなっちゃって、中途半端な演奏になってしまっているのかな? とにかく、確かにこういう演奏は、悪い音の演奏よりも酷いのかもしれない。
< 34 / 39 >

この作品をシェア

pagetop