ヒスイのさがしもの



「……あー、ヒスイ。これでいいか?」


 トウマは少しだけ面倒そうに、でも正しいアクセントで私の名前を呼んだ。それが、なんだかとてもうれしい。


「うん、合ってる」

「よし、それじゃあ、行くとしよう」

「……どこに?」

「ウツギサンのところ」

「ウツギ、さん?」


 トウマの人名へのアクセントは、やっぱり少し聞き慣れない。


「そう、ウツギサン。俺だけの力じゃ君を帰すことはできない。だから誰か頼る相手が必要だ」

「帰るのって、もしかして……簡単じゃないの?」

「ーー行きはよいよい、帰りはこわい。神隠しから帰ってきた奴がどれだけいる? 『こちら側』に来てしまう人間は、なにかに呼ばれて来たはずだ。用があるから呼んだんだ。用があるのに帰さないだろ」

「誰か……神様? が、私を呼んだってこと?」

「本来ならそうだが、今回はわからない。君が無理やり俺についてきたからな」

「トウマが私を連れてきたんじゃないの?」

「あのまま何もしなければ君の頭はかち割れてたぞ。一か(ばち)か、やってみただけ。何故できたのか、そもそも俺の力なのかもわからない」


 トウマにも、わからないことがある。それはそうだ。全知全能なんかない。でもそうしたら、私にはもっとわかりっこない。

 神様に呼ばれたのなら、用が済めば帰れるのかもしれない。でも、そうじゃないのなら。トウマもわからない理由でこっちに来たなら、あっちに帰る方法もわかるはずがない。


「……私、帰れるの?」


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