ヒスイのさがしもの
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風が止んで、山の頂上、大樹の下に誰かが座っているのが見えた。和服をまとうその人は、おもむろにこちらを見る。目が合った瞬間、呼吸の仕方を忘れた。
ーーウツギさんだ。
直感で、そう理解した。それはきっと、彼の周囲に神々しさが漂っているからだ。
少し不気味な鳥のさえずり、嗅ぎ慣れない山のにおい、踏みしめた木の葉の崩れる感触ーー感覚が変に研ぎ澄まされる。冷や汗が滲んで、今感じているのが恐怖だとわかる。
「ただいま。ウツギサン、あんまり怖がらせるなよ」
「私は何もしていないよ。神様ってそういうものだろう」
ウツギさんは、二十代くらいの男性に見える。パセリの神様と違って、姿は人間そのものだ。端正な顔立ちで、植物の芽のような薄い緑の長髪を束ねている。
「ヒスイ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫……」
トウマは、心配そうに私の顔を覗き込む。
……私にはトウマがついている。だから、大丈夫だ。ウツギさんの方へ、顔を上げる。