ヒスイのさがしもの
「幽世によもつへぐいはないが、その子を呼んだ神の意志がそうあれば、その限りじゃない」
「えーと、つまり……?」
混乱する私を見かねたのか、トウマは腕を組みながら口を開く。
「……つまり、紅はパセリの神様に呼ばれて来た。で、パセリの神様がよもつへぐいをさせてやろうって思ってるなら、紅に対してそれはできてしまうってことだな」
「い、急がなきゃ! ーーってことだよね!?」
「その通りだ」
まさかそんな落とし穴があるなんて。ウツギさんに会ったとき、きちんと説明しておけばよかった。
「それじゃあ、俺たちは行ってくる」
「あのっ、色々ありがとうございました! 現世に帰るとき、またよろしくお願いします」
「ヒスイ」
「はい?」
ウツギさんは微笑んでいて、けれどどこか違和感があるように思う。慈愛だけではない表情のような、そんな気がした。
「君が探しているものが、見つかることを願っているよ」
「ーーありがとう、ございます……」
ウツギさんは私がなくしたものについて、もっと詳しく知っているのだろうか。けれど今、そんなことを訊いてる暇はない。
ーーふたりとも、気をつけて。そんなウツギさんの言葉を背に、私はトウマと共に走り出す。
送り出された私の頬を、風がやさしく撫でる。それには不思議な懐かしさを覚えたがーーそれは、紅ちゃんを助けなきゃという焦りにすぐにかき消されてしまった。